HILSに100%の再現性はあるのか?
以前、HILS導入を検討している方から、
「HILSはシミュレータなので、何度試験しても同じ結果になるのか?」
と、再現性について聞かれました。
結論としては、
HILSの構成要素にバラつきがあるので、100%の再現性は確保できません
構成要素によりますが、感覚的には95 – 99%ぐらいの再現性ではないでしょうか
HILSは、パソコン上で完結しているシミュレーション(MILやSIL)とは違い、
ハードウェアを利用していため、どうしてもバラつきが発生します。
ただ、このバラつきがあることが悪いわけではなく、
バラつく要因を理解しながら、HILS上で検証や環境構築していくことが大切です
もちろん、再現性を100%に近づけることも重要なので、
バラつく要因と対策について、以下で簡単に解説します。
要因の代表的なのがCAN通信です。
HIL上でECUのテストをする際にCAN通信を利用する方が多いですが、
通信の衝突を検知すると、ディレイが入り再送処理が発生し
この再送によって、評価結果のバラつきが発生します
これは、ECUとHILSでCAN送受信の完全同期(※)が取れておらず、
また、ECUとHILS内のクロックにごく僅かなズレがあるためです。
例えば、ECU側は、10.00001msで送信して、HILS側は9.99999msで送信していたりします
(HILSだけではなく、実機、実車でも同じことが起きています)
さらに、上記を考慮して制御を設計していれば良いのですが、
CANの信号を用いて、1JOB判定しているロジックがあると制御結果がズレやすいです
そもそも制御のロバスト性が低いと、この現象が発生します
また、その他の要因としては、
・プラントモデルの積分値(前回値保持等も)によって、シミュレーションする毎に微妙に異なる動き
→ 対策例)積分値をリセットする仕組みを追加
・ECU内部にキャリブレーション機能(学習値)があり、更新されてしまい、制御の挙動が変わる
→ 対策例)HILS用ソフトは学習禁止にしておく
・テスト自動化ツールで試験しているがパソコン上で動かしているため、OSの影響を受ける
→ 対策例)パソコン上ではなく、モデルと同期してテストを実行する
などが考えられます。
このあたりはご使用の環境に合わせて、改善が必要であり、
愚直に一つずつ解析して潰していくしかないといったところです。
ただ、上記で説明した通り、マイコンやECUの知識がないと
解決できない場合が多々あるため、まずは有識者に相談するのが効率的かと思います。