シミュレーション精度100%を目指さない?

先日、「実機データに限りなく近いシミュレーションを検討しているお客様」と打合せしました

打合せ中に、
・シミュレーションと実機データのズレはどれぐらいあるのか?
・シミュレーションと実機がズレていると制御ロジックを正しく開発できない。手戻りが発生する
などのご意見や質問を頂きましたが、弊社との考え方にギャップを感じました

お客様のプロセスや開発状況を完全に把握しておらず、
お客様との関係も薄く、弊社の考えをご説明すると角が立ちそうだったので、
その場では濁して会話していたのですが、弊社の考えを下記に示しておきます

弊社の考え

シミュレーションの精度を100%に近づけることは必ずしも望ましくありません

もちろん、実機データを使用してシミュレーション精度を上げることが重要なのですが、
開発工数やその効果のバランスを考えることが大事です

例えば、開発中の実機の実験データは必ずしも正解はなく、実機にもバラツキがあるため、
どの個体のデータが正しいのか分からないことが多いです

また、実機のデータを測定した条件にも様々な要因が存在します
例えば、自動車開発だと、気温、路面の摩擦抵抗、その時の車重、微妙な勾配や空気抵抗など、
複数の条件があり、同じ個体でも条件の差によって実機データにバラツキが発生します

そのため、このようなバラツキがある中で、
100%のシミュレーションを目指すと
度重なる計測作業や測定環境の合わせこみなどに膨大に時間がかかります

開発の序盤中盤でシミュレーション活用することが大事なのですが、
100%精度のシミュレーション環境の完成を待っていたら、実際の開発が終わってしまいます

では、どうすれば良いのか?

ついつい精度を100%に近づける活動が始まってしまうのですが、
まず大事なのはシミュレータを導入する目的や検証したい項目を明確にすることです

個人的な感覚だと、シミュレーションで60~70点ぐらいを検証し、
残りは実機で試験することが望ましいと考えております

また、シミュレーションの精度が低いと手戻りが発生するという意見もありましたが、
プラントモデルに合わせて制御ロジックを開発することは避けた方がよいです
(もちろん、あまりに精度が低い場合は改善が必要です)

前述したように実機にもバラツキがあるので、
ある実機データに合わせて制御ロジックを作成すると、
結果的に、ロバスト性の低い制御ロジックになってしまいます

そのため、シミュレーション精度、導入工数、検証の目的を理解し、
効果的な開発プロセスを実現することが最も重要となります

補足:どのようなプラントモデルを選定すれば良いのか?

精度も大事なのですが、個人的に重視しているのは、
きちんと調整できる機能や要素がプラントモデルに備わっていることです

例えば、プラントモデルの中身がブラックボックスで
調整できるパラメータがないのは望ましくないです

シミュレーション環境構築者は、上記の点を考慮しつつ、シミュレータの目的や検証項目を明確にし、
適切な精度でシミュレーション環境を構築することが重要となります