HILSを短期間で立ち上げてはいけない理由とは?失敗を防ぐための準備
HILSは単なるシミュレーションツールではなく、社外の方や社内の多くの関係者が横断的に関わる複雑なシステムです。
適切な準備なく短期間で立ち上げようとすると、思わぬトラブルに見舞われ、かえってスケジュールが大幅に遅れる結果を招くこともあります。
この記事では、なぜHILSを急いで立ち上げるのが危険なのか、そして、どう進めればスムーズに構築できるのかを具体的に解説します。
1.なぜ短期間のHILS立ち上げが危険なのか?
HILS構築に失敗する典型的なパターンの一つが、
モノが揃っているので、あとは作業員をアサインすれば、短期間で立ち上がると思い込んでいるケースです。
いざ、環境構築を始めると、
他部署から貰う必要がある仕様や情報が揃っていない
ツールを操作したことはあるが、立ち上げ経験がないエンジニアを配置している
シミュレータのエラーやワーニングの意味が分からない
購入物に抜け漏れがあり、追加で製品を購入しないといけない
などが様々な問題が発生し、スケジュールが遅延してしまうケースを多々見てきました。
HILSは、制御対象のモデルや入出力機器、評価条件などが複雑に絡み合う環境であり、関わる人も多岐にわたります。
また、ツールベンダーとの技術的なやり取りも多く発生します。
ワーニングやエラーに直面した際、原因がベンダー側の仕様なのか、自社の設定ミスなのかの切り分けが難しく、
調査や回答が長引くこともあります。
さらに、他部署から必要なデータを集める必要があるなど、構築作業は自分たちのペースだけでは進まないというケースもあります。
こうした背景から、HILSは“構築作業の段取りの丁寧さ”が問われるプロジェクトなのです。
2.ではどうすればよいか?アドバイザーの早期参画がカギ
HILS立ち上げを成功に導くための最大のポイントは、仕様検討や製品選定の初期段階から、
HILSに詳しい人材をアドバイザーとして参加させることです。
週1あるいは隔週程度のレビューやミーティングに参加してもらうだけでも十分です。
この段階で専門家が入っていれば、
必要なI/O構成の妥当性、ツールやライセンスの選定、制御対象モデルとの整合性、注意すべき技術的なポイントなど、
後で大きな問題になる前に的確なアドバイスを受けることができます。
さらに、効率的な開発に役立つツールの提案など、実践的なノウハウも得ることができ、
HILS開発の品質と速度の両立が実現しやすくなります。
「分からないから、とりあえずツールベンダーに相談しよう」という進め方を見かけますが、これも注意が必要です。
ツールベンダーは自社製品については詳しいですが、当然ながらHILS全体の設計やシステム全体の連携まではカバーしきれないことが多いです。
まとめ
HILSを短期間で立ち上げるというアプローチは、多くのリスクとトラブルの原因になりかねません。
関係者が多く、要件の複雑なHILSプロジェクトでは、スピードよりも「正しい順序と準備」が求められます。
そのためには、仕様検討の初期段階からHILSに精通したアドバイザーを巻き込み、構築の方向性を正しく見極めることが重要です。
構築フェーズで手戻りが発生しないよう、部品選定・ライセンス・評価ニーズの把握といったポイントを丁寧に確認して進めましょう。
HILSの構築は、毎年発生するケースは少なく、数年や10年に1度といった頻度が主です。
そのため、自分達だけで実現するのではなく、最初から外部知見を柔軟に取り入れた方が効率的な導入になります。