モデルベース開発で失敗する原因とは?Simulinkをいきなり書き始める危険性
モデルベース開発(MBD)の導入で意外と多い失敗が、設計を十分に行わないまま、いきなりSimulinkモデルを書き始めてしまうことです。
教育や演習では、手順に沿ってSimulinkブロックを組み、シミュレーションを動かすことがよくあります。これはツール習得には有効です。
ただ、その感覚のまま現場に持ち込み、「Simulinkでモデルを作ればモデルベース開発になる」と考えると、導入はうまくいきません。
この記事では、Simulinkをいきなり書き始めることが、なぜMBDの失敗につながるのかを整理します。
Simulinkを使うことと、設計ができていることは別
モデルベース開発では、SimulinkやStateflowを使ってロジックを可視化し、検証を進められます。
ただし、ツールで表現することと、設計ができていることは同じではありません。
現場では、仕様整理や全体構成の検討が不十分なまま、いきなりブロックを並べてロジックを作り始めることがあります。シミュレーションは動くかもしれませんが、それが良い設計とは限りません。
本来の設計では、少なくとも次を考える必要があります。
- 入出力をどう定義するか
- 状態やモードをどう分けるか
- 条件分岐をどう整理するか
- 異常時や境界条件をどう扱うか
- 将来の変更や拡張にどう備えるか
これらを整理しないままモデルを書き始めると、ロジックは場当たり的になりやすくなります。
いきなりSimulinkモデルを書くと、つぎはぎのロジックになりやすい
全体構成が決まっていない状態でモデルを書き始めると、途中で条件追加や例外処理が増え、モデル全体が徐々に複雑になります。
その結果、次のような状態に陥りやすくなります。
- ロジック全体の意図が見えない
- 同じような処理が複数箇所に散らばる
- 修正の影響範囲が読みにくい
- 作成者以外が理解しづらい
- 保守や機能追加がしにくい
こうしたモデルは、シミュレーション上は動いていても、実際にはたまたま動いているだけになりがちです。
結果として、モデルが開発資産ではなく、属人化したブラックボックスになります。
モデルベース開発でも設計工程は飛ばせない
モデルベース開発という言葉から、設計工程を減らせると期待されることがあります。
しかし実際には、MBDでも設計工程は必要です。むしろ、モデルを有効に使うには設計をより明確にする必要があります。
モデルは、あいまいな考えをそのまま描くためのものではなく、整理した設計を見える形にして検証・共有するためのものです。
PoCや初期検討でいきなり作るのは悪いことではない
一方で、最初にざっくり作ること自体が悪いわけではありません。
PoCやアルゴリズム検討では、まず動くものを素早く作ることに価値があります。
ただし重要なのは、試作モデルをそのまま最終版にしないことです。
試作で得た知見をもとに、全体構成、冗長処理、機能分割、命名や階層を見直す必要があります。
つまり、まず作ってみるのはよいが、そのまま本番設計に持ち込まないことが重要です。
設計力が弱いままでは、モデルベース開発の効果は出にくい
モデルベース開発は強力な手法ですが、設計力そのものを不要にするわけではありません。
そのため、設計を構造化する力が弱いまま導入しても、期待した効果は出にくくなります。
よくあるのは、次のような状態です。
- モデルはあるが読みづらい
- 再利用しづらい
- テスト観点が整理されていない
- レビューしにくい
- 後工程につなげにくい
これはSimulinkが悪いのではなく、設計を整理する工程を飛ばしていることが原因です。
まとめ:Simulinkをいきなり書き始めると、MBDは失敗しやすい
モデルベース開発では、モデルは設計を表現し、検証し、共有するための手段です。
設計を飛ばしていきなりSimulinkモデルを書き始めると、つぎはぎのロジックになりやすく、結果として属人化しやすい成果物になります。
特に現場導入では、
- 教育演習の延長でモデルを書き始める
- 全体構成を決めずにブロックを継ぎ足す
- 試作モデルをそのまま本番化する
といった進め方に注意が必要です。
モデルベース開発を成功させるには、
「まずモデルを書く」のではなく、「まず設計を整理し、それをモデルで表現する」
という順番が重要です。

