「何ができるの?」「やりたいことは何ですか?」で止まるミーティング

技術商談やMBD導入検討の場で、よく見かけるやり取りがあります。

  • 顧客側:「何ができるのか、まだよく分からなくて…」
  • 提供側:「御社として、何をやりたいですか?、やりたいことによります。」

どちらも自然な発言です。
しかし、この往復が続くと、多くのミーティングは前に進まなくなります。


背景にあるのは、単なるコミュニケーション不足ではありません。
多くの場合、要求の具体化が難しい&選択肢の提示が不足している状態が同時に起きています。

多くの組織は「全体を見ようとして止まっている」

技術テーマが動かない組織を見ると、
品質責任や将来展開を真剣に考えて慎重になりすぎていると思います

  • 部分最適で失敗したくない
  • 後戻りコストを増やしたくない
  • 全体アーキテクチャ/他組織と整合を取りたい

こうした合理的な判断の結果、
「全体が見えないので、要求を具体化できない」という状態に陥ります。

全体像がないと、現場は説明できない

全体の見取り図がないまま個別テーマに着手すると、現場では次のような不安が生まれます。

  • 今やろうとしていることは正しいのか
  • 将来アーキテクチャ/他組織と整合するのか
  • なぜこの順番で進めるのか説明できない

結果として、技術的には正しい取り組みであっても、
組織内の合意形成が進まず、テーマが停滞してしまうことがあります。

それでも「困りごと起点」は有効な武器

一方で、全体設計の議論だけを続けても、
実装が一向に進まないケースも多く見られます。

  • 議論が抽象論に終始する
  • 理想設計が肥大化する
  • 現場の実感が伴わない

このような状態では、「現場の小さな違和感から着手する」というアプローチが、突破口になる場合もあります。

ここで重要なのは、困りごと起点を“場当たり改善”で終わらせないことです。

現実解は「全体 → 部分 → 全体」のループ

実務で最も機能しやすいのは、次のループです。

全体を仮置き → 小さく検証 → 全体を更新

この進め方には、いくつかの重要な意味があります。

① 全体を“仮”で置く(要求具体化の足場を作る)

最初から完璧な全体設計を作る必要はありません(作れません)
議論と判断のための暫定地図として全体像を描きます。

これにより、

  • 今やるテーマの位置づけが明確になる
  • 組織内説明がしやすくなる
  • 要求具体化の議論が進む

という効果が生まれます。

② 小さく検証する(選択肢の提示と学習)

全体像を仮置きした上で、影響範囲が限定されたテーマを選び、短期間で検証します。

ここでは提供側が、

  • 複数の小さな選択肢を提示する
  • 成否が判断できるスコープに絞る
  • 学びが得られる設計にする

ことが重要です。

顧客にゼロから考えさせるのではなく、
選択肢を提示して選んでもらう構造に変えることで、ミーティングは一気に動き出します。

③ 全体を更新する(学習を構造に戻す)

小さな検証で得られた知見を、最初に置いた全体像にフィードバックします。

  • 想定が正しかった部分
  • 修正すべき前提
  • 新たに見えた制約

という往復運動を設計することです。

おわりに

「何ができるのか分からない」「やりたいことは何ですか」という状態は、
決して珍しいものではありません。

多くの場合、それは検討が甘いのではなく、
全体像が見えないことへの慎重さです。

だからこそ、

「全体を仮置きし、選択肢を提示し、小さく試し、学びで全体を更新する」

という進め方が、現実的で再現性の高いアプローチになります。

全体志向と現場志向を対立させるのではなく、
両者をつなぐ設計こそが、MBDを推進を前に進める鍵になるのではないでしょうか。